2021年の食品衛生法改正で何が変わったか
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本ページは制度の概要を、厚生労働省の資料、自治体の案内、公的機関の報告書で確認できた範囲で整理したものです。許可の要否や施設の基準は自治体や営業内容によって異なります。実際の手続きは、営業を予定する地域の保健所に事前に相談してください。
キッチンカーの営業許可を理解するには、まず2018年(平成30年)6月13日に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成30年法律第46号)の内容を押さえる必要があります。厚生労働省食品監視安全課が作成した「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A」(令和2年12月28日作成、令和3年8月26日最終改正)は、この改正法に、実態に応じた営業許可業種への見直しと、政令で定める34業種以外の事業者に対する届出制度の創設が盛り込まれたと説明しています。
改正の主な柱は二つあります。一つは営業許可制度の見直しです。従来は、取り扱う食品によっては1つの施設で複数の許可が必要になる場合がありました。見直しでは「一施設一許可」の考え方が示され、許可業種が整理されました。札幌市の案内によれば、営業許可を要する業種は34から32に再編され、一部の業態は許可が不要になり、新たに許可が必要になった業態もあります。もう一つは営業届出制度の創設です。許可の対象にならない食品関係の営業でも、保健所への届出が必要になりました。許可の対象外だった事業者の所在を行政が把握するための制度です。
この制度見直しは令和3年(2021年)6月1日に施行されました。同じ日から、営業許可施設と営業届出施設のいずれも、HACCPに沿った衛生管理を行うことが求められています。札幌市の案内では、これまで免除されていた臨時営業や弁当の仕入れ販売などを含め、すべての施設に食品衛生責任者を置くことが義務づけられたとされています。この点は自治体によって扱いが異なる可能性があるため、営業予定地の保健所でご確認ください。
自動車で営業する場合の許可と届出
キッチンカーのように自動車で営業する形態の扱いは、自治体の案内で確認できます。北海道の「自動車営業をはじめられる方へ」では、取り扱う食品や営業内容によって次のように整理されています。
- 営業許可が必要なもの:焼き鳥、唐揚げ、フライドポテト、クレープなどの調理販売、ビールやコーヒーなどのドリンク類の提供、包装していない魚介類の陳列販売など。許可は有料で、有効期間は5年です。
- 営業届出が必要なもの:弁当・そうざいの完成品の販売、食肉・魚介類の包装済み品の販売、青果物の販売など。届出は無料で、期間の制限はありません。
- 許可も届出も求められないもの:常温で長期間保存できる包装済み食品(缶詰、スナック菓子、常温保管できる飲料など)。
これは北海道の案内にもとづく区分です。都道府県や保健所設置市ごとに、同じ営業内容でも要件や手続きの流れが異なる場合があります。厚生労働省のQ&Aにも「キッチンカーの施設基準」への言及があり、その基準は令和元年12月27日付けの厚生労働省通知「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について」の別添に示されているとされています。制度の根拠を確認したい場合は、この通知と、各自治体が条例で定める施設基準をあわせて読むことになります。
施設基準:シンク・タンク・設備
中小企業診断協会の報告書は、キッチンカーが営業許可を取得するときに必要になる設備の例として、冷蔵設備(冷蔵庫・冷凍庫)、給水・手洗設備(シンク・蛇口)、タンク、保管設備(扉付きの収納棚)、照明設備、換気設備、間仕切りを挙げています。あくまで一般的な例であり、必要な設備は提供する商品や保健所の判断によって異なります。
シンクと蛇口
報告書によると、手洗い専用のシンクと調理器具を洗浄するためのシンクの2台の設置が、多くの保健所で義務づけられています。蛇口については、2021年6月の食品衛生法の改正により、手でハンドルやレバーを操作しなくても水が出せる非接触の水栓の設置が義務づけられました。自動水栓だけでなく、足で踏んで操作するフットペダル方式でも、許可を得られる場合があるとされています。
給水タンクと排水タンク
キッチンカーには水道が通っていないため、使う水を貯めるタンクと、使い終わった水を貯めるタンクの両方が、営業許可の要件とされています。北海道の案内は、タンク容量の目安を次のように示しています。
| タンク容量 | 提供できる内容の目安(北海道の案内) |
|---|---|
| 約40リットル | 1工程程度の簡易な調理。水は手洗い程度で、調理にはほとんど使わないもの |
| 約80リットル | 2工程程度までの簡易な調理。手洗いに加え調理にも水を使い、調理器具などの洗浄が必要なもの |
| 約200リットル | 多品目の提供。手洗いに加え調理にも大量の水を使い、器具・食器の洗浄や原材料の下処理が必要なもの |
2026年10月時点、北海道保健福祉部食品衛生課の案内に基づく。基準は自治体によって異なるため、営業予定地の保健所の案内を事前に確認してください。
報告書は、40リットルのタンクの車両でも営業はできるものの、単一品目に限られ、ドリンクも1品目として数えられるため、たとえばフライドポテトとジュースを同時に出すことができなくなると指摘しています。現実的には、80リットルまたは200リットルのタンクを備える必要があるという見方です。北海道の案内も、調理や仕込みの扱いについて、提供する品目の数や工程の数で基準が分かれることを示しています。
そのほかの設備
収納棚には、埃や虫が入らないよう扉をつける必要があり、隙間がないかも確認されることがあります。照明は、調理や食品の状態の確認、清掃に必要な明るさを確保することが求められ、保健所によってはルクスで具体的な数値を定めています。換気扇は、結露による水滴で食品が汚れることを防ぐために、多くの保健所で設置が求められます。換気扇の設置は車体に穴を開ける作業が伴うため、内装工事の段階で組み込むことになります。食品を取り扱わない場所との間には、仕切り板などで区画をつくることが求められる場合があり、どの程度区切ればよいかは保健所に確認する必要があります。
食品衛生責任者の資格
報告書によれば、食品の製造や販売を営むには食品衛生責任者を配置することが営業許可の要件となっています。資格は、各自治体で開催される養成講習会(1日・6時間、受講料は1万円前後)を受講したうえで、保健所に申請して取得します。講習では「衛生法規」「公衆衛生学」「食品衛生学」の3科目を学び、最後にテストがあります。栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、船舶料理士、食品衛生管理者などの資格者や、医師、薬剤師は、講習が免除され、保健所への申請のみで取得できるとされています。講習の日程や費用は自治体や実施団体により異なるため、早めに確認しておくと準備がスムーズです。
営業できる範囲と仕込み場所
キッチンカーは出店場所を自由に選べますが、報告書は、都道府県をまたいで営業する場合は、都道府県ごとに保健所の許可を受けなければならないと説明しています。遠方のイベントに一時的に出店する場合でも、その地域の営業許可が必要になります。また、仕込みを車内で行えない設備の場合は、事前に仕込み場所で仕込んだうえで出店場所で簡単な調理を行うことになり、その仕込み場所についても営業許可を得る必要があります。仕込み場所と出店場所が別の都道府県にある場合は、それぞれで許可を取得することになります。
従来は、都道府県ごとに許可の際に求められる施設基準が異なっていましたが、2021年6月の改正により、統一された基準になりました。これにより、複数の都道府県で許可を取得することは以前より容易になったとされています。一方で、細かな部分は地域ごとに多少異なる場合があるため、念のため所轄の保健所で基準を確認する必要があります。
北海道の案内では、令和3年6月1日以降の新規許可は、道立保健所の管内に加え、札幌市、旭川市、函館市、小樽市を含む全道一円で営業できるとされています。申請先は、道内に営業基地がある場合は営業基地を所管する保健所、道外に営業基地がある場合は主な営業場所(予定を含む)を所管する保健所です。「営業基地」とは、発進前の準備や帰着後の後始末など、営業の管理的な業務を行う場所を指します。このように、許可の及ぶ範囲や申請先の考え方は自治体ごとに定められています。
道路使用許可・私有地・公園の扱い
報告書は、ビルの敷地や広場などの私有地ではなく、道路上で営業を行う場合には、警察に申請して道路使用許可を取得しなければならないと説明しています。つまり、保健所の営業許可とは別に、営業する場所の管理や使用に関する手続きが必要になるということです。私有地であれば土地の所有者や管理者の許可、公園であれば公園の管理者の許可、イベントであれば主催者の出店条件の確認が基本になります。
出店場所をマッチングする事業者も、出店者に必要な書類の提出を求めています。たとえばKITCHENCAR'S JAPANは、案件に応募するために、各地域の営業許可証、自動車検査証、PL保険証、車両平面図の登録が必要と案内しています。シンクロ・フードのモビマルのページでも、販売する地域を管轄する営業許可が必要と明記されています。出店の準備段階で書類を揃えておくことが、応募の前提になっています。
8ナンバー・車検・保険
報告書は、自動車を使うことから道路運送車両法が適用されるとして、車検を受ける必要があることを挙げています。特種用途自動車として8ナンバー登録するかどうかによって、車検の際の対応や車検の期間が変わります。8ナンバー登録をせず、1ナンバーや4ナンバーの貨物車のままにしている場合、車検の際に荷台のキッチン部分を降ろす必要が生じるとされています。8ナンバー登録をした場合は、作業スペースを降ろさずに車検を受けられます。車検期間は、8ナンバー登録をすると初回から2年ごとになります。元の車が1ナンバーで車検期間が1年なら期間は延びますが、3ナンバーや5ナンバーで初回の車検期間が3年の車なら、初回の期間は短くなります。自動車税や重量税などの維持費も変わるため、どの区分にするかは、費用面を含めて製作事業者や運輸支局に相談して決めることになります。
保険についても、報告書は、8ナンバー登録をした場合には、4ナンバーや1ナンバーとは異なる専用の自動車保険に加入する必要が生じる点を指摘しています。加えて、食中毒や、商品を受け渡す際にこぼして購入者の服を汚した、火傷を負わせたといった場合を補償する生産物賠償責任保険(PL保険)への加入も検討すべきだとしています。キッチンカーは車内が狭く、一般の飲食店のような強い火力や高性能の冷蔵庫を用意できないことから、食中毒のリスクが固定店舗より高くなり得るという指摘です。
日々の営業で出たごみは、事業系一般廃棄物または産業廃棄物の扱いになり、家庭ごみとして出すことはできません。食品リサイクル法も適用されるため、売れ残りなどの食品廃棄物の発生抑制や再生利用の取組が求められます。
開業前に確認する順番
制度面の確認は、次の順番で進めると手戻りが少なくなります。
- 営業する地域と、仕込みを行う場所を決める。
- 提供するメニューと、その調理工程の数を決める。タンクの容量やシンクの数はここから決まります。
- 営業を予定する地域の保健所に、車両の図面や設備の案を示して相談する。
- 車両を製作・購入し、必要に応じて8ナンバー登録を行う。
- 食品衛生責任者の資格を取得する。
- 営業許可を申請し、施設の確認を受ける。
- 道路上で営業する場合は、道路使用許可の手続きを警察署に確認する。
- PL保険や自動車保険に加入する。
製作事業者の中には、保健所の相談に必要な図面づくりを支援すると公式サイトで述べている事業者もあります。具体的な事業者の特徴は製作・レンタル事業者の比較表に整理しています。費用の考え方は開業費用と採算をご覧ください。
一次情報の確認先
- 厚生労働省:営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A
- 札幌市:営業許可制度の見直し・営業届出制度の創設について
- 北海道:自動車営業をはじめられる方へ
- 中小企業診断協会:キッチンカー(移動販売車)の開業・運営支援マニュアル 報告書
