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FOOD TRUCK MOBILITY LEDGER

開業費用と採算を数字で考える

費用の構成、出店料の方式、公表資料の前提を借りた仮定の計算例、失敗につながりやすい場面を整理します。

キッチンカーの販売窓の脇に、紙コップと電卓と帳簿ノートが置かれたテーブル

開業にかかる費用の構成

最終更新日:

本ページは、公的機関の報告書や各社の公式サイトに掲載された費用の目安と考え方を整理したものです。開業や収益を保証するものではありません。計算例は、公表資料の前提を借りた仮定の計算であり、実際の売上や利益は出店場所、メニュー、天候、人員体制で大きく変わります。

キッチンカーの開業費用は、固定店舗に比べて、保証金や内装費、テナント料などの負担を抑えやすいとされています。J-Net21の開業ガイドも、この点を指摘しています。その一方で、車両の購入や維持にまとまった費用がかかるうえ、燃料代、保険、車検、駐車場代、故障時の修理費が継続的に発生するため、費用の全体像を先に描いておく必要があります。中小企業診断協会の報告書は、キッチンカーを1台追加するには数百万円の資金が必要になると述べています。

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費用の項目は、開業時に一度だけかかる初期費用と、営業のたびにかかる運転費用、固定的にかかる維持費の三つに分けると整理しやすくなります。

初期費用

  • 車両:購入(新車・中古)、レンタル、リースから選びます。製作事業者が公表する価格の例は製作・レンタル・リースの比較表にまとめています。
  • 設備・什器:車内に置く冷蔵庫や作業台のほか、仕込み場所に置く機材。
  • 営業許可関連:営業許可の申請手数料、食品衛生責任者の養成講習(報告書は受講料を1万円前後としています)。
  • 広告宣伝:車体のラッピング、のぼり、看板など。報告書は、キッチンカー自体を広告塔にすることを挙げています。
  • 最初の仕入れ:食材や使い捨て容器などの在庫。

営業にかかる運転費用

  • 食材費(原価):報告書の収支計画の例では、一般的な飲食店の原価率を使って30%と置いています。
  • 出店料:場所の提供者やイベント主催者に支払う費用。次の節で整理します。
  • 燃料・ガス・電源:移動のガソリン代のほか、プロパンガスや発電機の燃料。報告書は、キッチンカーのガスはプロパンが多く、電源は発電機を使うことが多いと整理しています。
  • 梱包資材・消耗品:使い捨て食器、袋、おしぼりなど。
  • 人件費:運転と調理、接客を1人で行うか、アルバイトを雇うか。

固定的な維持費

  • 車両維持費:自動車税、オイル交換、自動車保険、車検、駐車場代。報告書はこれらを車両維持費にまとめています。
  • PL保険:食中毒や受け渡し時の事故に備えるための保険。
  • 仕込み場所の家賃:車内で仕込みができない場合に別途確保する場所の賃料。既存の店舗を仕込みに使えるなら不要になる場合があります。
  • 営業許可の更新と車検:数年に一度の支払い。

出店料の方式

出店料の方式には、固定と変動(歩合)があります。報告書は、出店料の目安を、固定の場合は1日あたり3,000円から数万円、変動の場合は売上の10〜20%としています。売上が大きく伸びる場所では固定の方が有利に、売上が少ない日は歩合の方が負担が軽くなる、という違いがあります。ただし、実際の条件は場所の提供者やイベントごとに異なり、報告書の数値は一つの目安にすぎません。

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この報告書の収支計画の例では、平日はスーパーマーケットの駐車場、土日祝日はイベント会場に出店する想定で、出店料を平日は1日3,000円、土日祝日は1日5,000円として計上しています。出店の応募時には、料金の方式、キャンセル時の扱い、売上保証の有無を確認しておく必要があります。出店場所のサービスの仕組みの違いは出店場所マッチングの比較表で整理しています。

仮定の計算例:売上から何が残るか

ここでは、中小企業診断協会の報告書が収支計画のサンプルとして示した前提を借りて、1年間の「営業の途中経過」を計算してみます。これは数字の動きを理解するための仮定の計算例であり、実際の営業結果を示すものではありません。前提はすべて以下のとおりです。

  • 平日の営業日は193日、土日祝日の営業日は120日とする。
  • 曜日や天候により客数が変わるため、営業日に対して70%の稼働率を掛けて「営業活動日」とする(平日135.1日、土日祝日84日)。
  • 平日はスーパーマーケットの駐車場に出店し、1日の客数は60人、客単価は800円とする。
  • 土日祝日はイベント会場に出店し、1日の客数は100人、客単価は1,000円とする。
  • 食材などの原価は売上の30%、交通費・梱包資材・保険料・光熱費・広告宣伝費などの経費は売上の15%とする。
  • 出店料は平日1日3,000円、土日祝日1日5,000円とする。
項目計算金額
平日の売上135.1日 × 60人 × 800円6,484,800円
土日祝日の売上84日 × 100人 × 1,000円8,400,000円
年間売上(仮定)上記の合計14,884,800円
原価(30%)14,884,800円 × 0.304,465,440円
その他経費(15%)14,884,800円 × 0.152,232,720円
出店料135.1日 × 3,000円 + 84日 × 5,000円825,300円
差し引き後の残り売上 − 原価 − その他経費 − 出店料7,361,340円

2026年10月時点、中小企業診断協会の報告書に示された前提を借りた仮定の計算。人件費、車両維持費、仕込み場所の家賃、減価償却、借入の返済は含んでいません。

この例で「残り」として出る約736万円は、そのまま手元に残る金額ではありません。ここからアルバイトの人件費、自動車税や車検などの車両維持費、仕込み場所の家賃、車両や設備の減価償却、借入の返済、そして営業者自身の生活費を賄う必要があります。報告書の収支計画では、これらも細かく積み上げたうえで、利益と投資回収の期間を算出しています。

稼働率が下がった場合

同じ前提で、稼働率だけを70%から50%に下げると、年間売上は10,632,000円、原価は3,189,600円、その他経費は1,594,800円、出店料は589,500円となり、差し引き後の残りは5,258,100円です。稼働率が20ポイント下がるだけで、残りは約210万円減ります。車両の維持費や仕込み場所の家賃は営業日数に関係なく発生するため、実際にはこの減り幅以上に、営業の利益が圧迫される可能性があります。悪天候や車両トラブル、出店先の中止が続いたときにどう耐えるかを、事前に想定しておく意味はここにあります。

1日あたりの目安

平日の出店1日分で見ると、客数60人、客単価800円で売上は48,000円です。原価30%の14,400円、その他経費15%の7,200円、出店料3,000円を差し引くと、残りは23,400円です。ここから人件費や維持費を負担します。客数や客単価が前提より少なければ、残りは大きく減ります。逆に、前提の客数が実現するかどうかは、出店先の人通り、周辺の競合、メニュー、天候次第です。

失敗につながりやすい場面

開業後に起きやすいつまずきを、公的機関や事業者の公開資料に沿って整理します。

出店場所を確保できない

J-Net21は、出店場所の確保が大きな課題であり、好立地は競合との取り合いになることも少なくないと指摘しています。出店場所がなければ、車両を購入してもキッチンカーは稼働しません。複数の経路から出店先を確保する計画を、開業前に立てておく必要があります。

天候に左右される

J-Net21は、固定店舗に比べて天候に売上が左右されやすい点をデメリットとして挙げています。雨や猛暑、強風の日は客数が減り、イベントそのものが中止になることもあります。中止時の費用負担や、売上が見込めない日の固定費をどう吸収するかを、資金計画に織り込んでおく必要があります。

設備とメニューが合わない

営業許可で認められる調理の範囲は、タンクの容量や設備で決まります。営業許可と制度で整理したとおり、40リットルのタンクの車両では単一品目に限られる場合があります。開業後にメニューを増やそうとしても、車両の設備が追いつかず、改修や許可の取り直しが必要になる場合があります。

仕込みの負担と廃棄

仕込み場所の確保と営業許可は、キッチンカー特有の負担です。仕込み量が多すぎると売れ残りが廃棄になり、食品リサイクル法の観点からも発生抑制が求められます。天候や出店先の客数を踏まえて仕込み量を調整する工夫が必要です。

車両の維持管理

J-Net21は、事業の基盤が自動車であるため、維持管理コストを十分に見込む必要があり、故障時の想定外の事態への対応も運営上の負担になると述べています。車検や点検の時期に営業ができなくなる期間も、収支に影響します。

資金調達の考え方

報告書は、資金調達の選択肢として、日本政策金融公庫の新規開業資金、自治体の制度融資、小規模事業者持続化補助金などの補助金を紹介しています。報告書の作成時点(令和5年3月)で、日本政策金融公庫の新規開業資金は、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人を対象とし、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)と整理されています。また、小規模事業者持続化補助金(通常枠)の補助上限は50万円で、報告書は、キッチンカー事業での留意点として、自動車等の車両は補助の対象にならないことを挙げています。

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融資や補助金の条件、対象となる経費、募集の時期は、年度や制度の改定で変わります。最新の内容は、日本政策金融公庫や各制度の公募要領、自治体の窓口で確認してください。

数字を見る前に確認したい三つの問い

具体的な金額を並べる前に、次の三つを自分に問いかけておくと、数字の意味が読み取りやすくなります。

どの営業の型で稼働させるのか

平日のランチ中心か、土日祝日のイベント中心かで、出店料の方式も客単価も変わります。報告書の計算例は、平日と土日祝日で客数と客単価を分けて置いていました。自分の営業を型ごとに分けて、日数と客数を別々に見積もることが、売上の見込みの出発点です。

固定的な費用はいくらか

営業日が少ない月でも発生する費用が、手元の資金に与える影響は大きいものです。車両の支払い、保険、車検の積み立て、仕込み場所の家賃は、稼働率に関係なくかかります。計算例のように変動する費用だけを差し引いた残りと、固定的な費用の合計を並べて、月ごとの余裕を確認しておきます。

うまくいかなかった場合にどこで見直すのか

稼働率が下がったとき、出店先を替えるのか、メニューを見直すのか、人員を減らすのか、判断の基準を事前に決めておくと慌てずに済みます。レンタルで試す、少数の出店先で記録を取るといった小さな検証を重ねてから、投資額の大きい決断を行う順番が考えられます。

開業後に記録しておきたい数字

開業後は、最初の数カ月の記録が、その後の判断の土台になります。出店日ごとに、売上、客数、客単価、食材費、出店料、燃料代、売れ残りの数を記録しておくと、出店場所ごとの手元に残る金額を比べられます。報告書の収支計画も、売上を客数と客単価に分け、原価や経費を売上に対する比率で置いたうえで、利益と投資の回収期間を算出する構成でした。同じ形式で自分の実績を整理すると、計画との差がどこから生じているのかを特定しやすくなります。

確定申告の準備にも、日々の記録は役立ちます。キッチンカーの窓口は、確定申告サポートを事業の一つとして挙げています。会計の方法や税務の取扱いは、税理士や税務署などの専門家への確認が必要です。

一次情報の確認先

本サイトはキッチンカー・移動販売の業界動向と制度を公開情報から整理したものであり、特定の車両製作業者・出店サービスの推奨や開業の成功を保証するものではありません。営業許可・道路使用・車両の要件は自治体や所管官庁により異なります。必ず保健所・警察署・運輸支局等にご確認ください。