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FOOD TRUCK MOBILITY LEDGER

これからの移動販売モビリティ

移動スーパー、買い物弱者対策、災害時の炊き出し協定、電源と設備、働き方の論点を公表資料で整理します。

静かな住宅地の道に停まった移動スーパーの車両と、棚に並ぶ食料品が見える様子

買い物弱者対策としての移動販売

最終更新日:

本ページは、移動販売の社会的な役割と今後の論点を、農林水産省の資料、各社の公式発表で確認できた範囲で整理したものです。特定の事業者や事業モデルの推奨、事業の成功を保証する趣旨ではありません。

移動販売は、街なかの昼食を担うキッチンカーだけでなく、買い物が不便な地域で食料品を届ける役割も担っています。農林水産省の農林水産政策研究所は、令和6年(2024年)2月27日に、2020年の食料品アクセス困難人口の推計を公表しました。推計では、店舗まで直線距離で500m以上離れており、かつ65歳以上で自動車を利用できない人を「食料品アクセス困難人口」と定義し、全国で904万人、65歳以上人口の25.6%にあたるとされています。そのうち75歳以上は566万人で、75歳以上人口の31.0%、困難人口全体の63%を占めます。推計には令和2年国勢調査の地域メッシュ統計と店舗の所在情報が使われ、対象店舗は、生鮮食料品小売業、百貨店、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアです。

この推計には注意が必要です。2015年以前の推計にはドラッグストアが含まれていないなど、算出の条件が年次で異なるため、連続した推移として単純に比較することはできないと注記されています。農林水産省のページによると、2015年との比較では全国で9.7%の増加とされていますが、データの条件が異なる点に留意が必要です。

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農林水産省の「食品アクセス(買物困難者等)問題への取り組み方について」のページは、取組を、経済産業省の「買物弱者応援マニュアル」を参考にした五つの分類で紹介しています。「家まで商品を届ける」(宅配、買物代行、配食)、「近くにお店を作る」(移動販売、買物場の開設)、「家から出かけやすくする」(移動手段の提供)、「コミュニティを形成する」(会食)、「物流を改善・効率化する」です。移動販売は、二つ目の「近くにお店を作る」の取組例に位置づけられています。同ページには、令和8年4月15日に「食品アクセスの確保に関する先進的取組事例集」が公表されたことも記載されています。

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地域スーパーと組む移動スーパー

移動販売による買い物支援の民間の例として、株式会社とくし丸が運営する移動スーパー「とくし丸」があります。同社の会社概要によると、本社は徳島市南内町、設立は2012年1月11日、資本金は1,000万円です。公式サイトでは、全国の地域スーパーと提携し、移動スーパーのネットワークが広がっていると説明しています。公式サイトには稼働台数のページがありますが、本ページでは台数を転記せず、最新の値は公式サイトの記載に委ねます。

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この仕組みの特徴は、移動販売の車を運営する側と、商品を供給する地域スーパーが役割を分ける点にあります。街なかで調理してその場で提供するキッチンカーとは営業形態が異なり、食品の販売には保健所への届出や許可が関わります。北海道の自動車営業の案内でも、完成した弁当や惣菜、青果物、包装された食肉・魚介類の販売は営業届出、調理販売は営業許可というように、営業内容で区分されています。移動販売で食料品を扱う場合も、扱う商品によって必要な手続きが変わるため、営業予定地の保健所への確認が出発点です。

キッチンカーのプラットフォーム側でも、住宅団地や商店街との関わりが示されています。シンクロ・フードの2024年2月のリリースは、キッチンカーに加えて「MOBIX」と呼ばれる各種の移動販売車も展開し、住宅団地や商店街の活性化を目指していると説明しています。昼食を提供する飲食の営業と、日用品や食料品を届ける営業は、同じ移動販売でも収益の構造や必要な手続きが異なるため、地域ごとに担い手や条件を確かめながら進める必要があります。

車両の形と営業基地の考え方

移動販売の車両には、自動車の荷台を改装したものだけでなく、牽引車とトレーラーを組み合わせたものもあります。北海道の自動車営業の案内では、牽引車とトレーラーを切り離した状態での営業は原則として認められていないと整理されています。ただし、牽引車の配置場所が営業場所から近く、速やかに連結して移動できる範囲であれば、一時的に切り離して営業できるとされ、その場合は牽引車にも許可車両であることを示す必要があります。具体的には、「食品衛生法に基づく許可済車(牽引車)」と記載した書面か営業許可証の写しを、外から見える位置に置きます。

営業基地の考え方も、広い地域で営業する事業者には重要です。許可の申請先は、道内に営業基地がある場合は営業基地を所管する保健所、道外に営業基地がある場合は主な営業場所を所管する保健所とされています。引っ越しなどで営業基地の住所が変わった場合には、許可を取得した保健所に変更届を提出します。苦情や健康被害が生じた場合には、最初に許可を取得した保健所へ連絡し、他の保健所の管内でも営業しているときは、その営業場所も伝える必要があります。

これらは北海道の案内にもとづく取扱いであり、他の自治体では運用が異なる場合があります。移動販売の範囲を広げる場合は、営業基地を置く地域と、主な営業地域の保健所の双方に確認するのが基本です。

電源・車両・設備の論点

キッチンカーの設備は、これからの運営でも検討が続くテーマです。中小企業診断協会の報告書は、キッチンカーの営業形態の特徴として、屋外で営業すること、設備が限られること、ガスはプロパンガスを使うことが多い(電気式もある)こと、電源は発電機を使うことが多いこと、出店場所が日によって変わることを挙げています。

こうした設備の前提は、車両の選び方に影響します。発電機を使う場合は、燃料の確保と騒音への配慮が必要になり、出店先の規約で使用が制限されることもあります。電気式の設備を採用する場合は、必要な電力量に見合う電源の確保が課題になります。電動車やバッテリー電源の採用は、運営コストや環境負荷の面で関心を集める論点ですが、導入事例の数や効果を示す公的な統計は、本ページで参照した公表資料には掲載されていません。製作事業者に相談する際には、使う調理機器の消費電力、営業時間、出店先の電源条件を整理して伝えることが、設備を決める第一歩になります。

車両そのものに関する制度は営業許可と制度で整理したとおり、8ナンバー登録の有無によって車検の期間や保険が変わります。車両の費用と事業者の違いは製作・レンタル・リースの比較表をご覧ください。

防災と自治体との連携

キッチンカーを災害時の食の支援に生かす取組が、自治体との協定という形で進んでいます。千葉市に本社を置く合同会社prove LiFEは、2026年8月14日の発表で、2025年10月から「災害時におけるキッチンカーによる炊き出し等の実施に関する協定」を自治体と結ぶ取組を進めていると説明しています。きっかけは、2019年の千葉県の台風被害で長期停電が起きた際に、同社と協力するキッチンカーが炊き出し支援を行った経験だとされています。

発表によると、仕組みは、平時に営業しているキッチンカー事業者が、登録制のプラットフォームを通じて、避難所や被災地域へ出動するというものです。平時から自治体と事業者が情報共有や訓練を行い、いざという時に迅速に動けるネットワークをつくることも目指しています。協定の締結自治体は、2026年8月時点で7自治体で、千葉県船橋市、東京都千代田区、福岡県福岡市、愛知県名古屋市、埼玉県川口市、福島県田村市、千葉県市原市が挙げられています。今後は千葉市や横浜市とも連携を予定しているとされています。

この取組は、キッチンカーの事業者にとって、平時の営業に加えた新しい役割を示すものです。一方で、災害時に食品を提供する場面では、衛生管理や食物アレルギーへの配慮、費用の負担、道路の通行といった実務の取り決めが重要になります。協定の内容や費用の扱いは、自治体ごとに異なるため、参加を検討する場合は各自治体の協定書や担当部署に確認する必要があります。

キャリアとしての入口と学びの場

キッチンカーを仕事にする入口は複数あります。自分の車両を持って独立する方法のほかに、レンタルで試してから決める方法、製作事業者が実施する開業セミナーに参加する方法、出店支援の説明会で出店の流れを学ぶ方法があります。モビマルは出店サポート説明会と出店支援を、フードトラックカンパニーやキッチンカーの窓口は開業セミナーを、それぞれ公式サイトで案内しています。

資格面では、営業許可と制度で整理したとおり、食品衛生責任者の資格が営業許可の要件として配置を求められます。養成講習は1日・6時間で、受講料は1万円前後とされています。栄養士や調理師などの資格者は講習が免除されます。

運営を支える人材の確保では、シンクロ・フードがモビサポの一つとしてスポットワーカーの募集支援を挙げています。1台のキッチンカーでも、運転、調理、会計、片付けと業務が多く、繁忙日には人手が足りなくなることがあります。複数の出店を並行して行う事業者にとって、短時間の人員の確保は運営の課題の一つです。キッチンカー全体の就業者数や収入に関する公的な統計は、本ページで参照した公表資料には掲載されていません。

今後の論点のまとめ

ここまでの内容から、移動販売モビリティの今後を考えるうえでの論点を整理します。

  • 地域の役割:街なかの昼食需要への対応から、買い物が不便な地域への食料品の供給まで、移動販売の役割は広がっています。食料品アクセス困難人口の推計は、需要の大きさを示す一つの手がかりです。
  • 制度の確認:営業内容によって、許可、届出、道路使用などの手続きが変わります。都道府県をまたぐ営業では、地域ごとに確認が必要です。
  • 設備と電源:プロパンガスや発電機を使う前提の設備が主流で、電源の選択は運営コストや出店先の条件に関わります。
  • 防災との連携:災害時の炊き出しに関する協定は、2026年8月時点で7自治体で結ばれており、平時の営業と非常時の役割をどう両立させるかが課題です。
  • データの活用:出店データや売上データを蓄積して、出店の判断に生かす構想が公表されています。詳細は出店場所選びと需要予測AIで扱っています。
  • 採算の見通し:どの用途でも、車両の維持費と出店の稼働率が採算を左右します。数字の考え方は開業費用と採算に整理しています。

市場の広がりと全体像はキッチンカー市場と移動販売の全体像、出店場所のサービスの違いは出店場所マッチングの比較表をご覧ください。

一次情報の確認先

本サイトはキッチンカー・移動販売の業界動向と制度を公開情報から整理したものであり、特定の車両製作業者・出店サービスの推奨や開業の成功を保証するものではありません。営業許可・道路使用・車両の要件は自治体や所管官庁により異なります。必ず保健所・警察署・運輸支局等にご確認ください。